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税理士:三保 俊輔
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記事には税理士三保の私見が含まれていることがあります。経営の記事については、他の価値観を否定するものではありません。また、WEBサイトは様々な立場の方が閲覧されているため、内容によっては抽象的な表現をする場合があることを御了承ください。
個人事業者と小規模法人ってどちらが有利?
それぞれのパフォーマンスとリスクを理解して最終決定する問題
新たに事業をはじめる場合、個人事業者として開業した方がよいのか、それとも、いきなり会社を設立した方がよいのか、初めての方にとっては簡単な問題ではないかもしれません。
また、すでに個人で事業をされている場合、法人にしたほうがよいのか、法人にすべきタイミングはいつなのか、判断基準がなく迷う方も少なくありません。
個人事業は思い立ったら、税務官庁への届け出のみですぐに開業できます。
一方、法人の場合には定款認証や設立登記などの会社設立の手続きから始めななければいけません。会社設立の手続きには時間と費用がかかります。
設立時の資本金の額にもよりますが、一般的には株式会社設立の場合で15~30万円の費用がかかり、設立までの期間も3週間程度はみておかなければなりません。
社会信用度が後々のビジネスを変えることがあります。
この問題は業種によっても異なります。例えば、知名度の高い資格をベースにサービスの中心をその個人に対する技術や信頼に求めるようなビジネスでは、法人にしなくてもある程度の信頼度は確保できる傾向にあります。
反対に、不特定多数の顧客を相手にするビジネスにおいて「個人事業」を選択することは、その後の展開を有利にするものではありません。
このような場合には、顧客を欺くわけではないのですが、一見すると企業と見間違うような屋号をつけて企業ロゴを作成し、個人であることを意識させない戦略が必要になるケースもあるでしょう。
開業スタイルの選択は、顧客に対してどのように「信頼」を表現するかという一つの手段であり、そのことを踏まえたうえで、税務面からの有利不利も視野に入れて総合的に結論を出すべき問題であると感じます。
起業する側のリスク面を考慮すると、最初の1年間だけは個人事業者としてスタートし、その後に法人成りする方法も考えられます。
1年間でも個人事業者を行えば、その業界で実際に「個人」がどの程度の風当たりであったかを評価することができます。ここで大切なのが、自分がリーダーの立場でその風当たりを体感することです。サラリーマンの時代にはなかった苦労がそこにはきっとあります。
このように、開業スタイルの問題には多くの検討すべき事項がありますが、今回は、個人か法人かを決めるうえで大きな判断基準となる開業後の税務を中心にお話をします。
会社は役員の給料を費用計上できる
個人と法人でまず大きな違いは、経営者自らの給料を経費に計上できるかどうかという点です。法人であれば、通常は「役員報酬」というかたちで費用となりますが、個人事業では単なる生活費として扱われ、費用計上することはできません。
これにより、法人の方が経営者の給料分だけ課税所得が少なくなるということになります。
しかし、法人経営の場合で受け取った役員報酬は経営者個人に対して所得税や住民税が課税されますので、この単純な話だけでは終わりません。
話はこのあとに続きます。
役員報酬には所得税の計算で給与所得控除の規定がある
役員報酬は、受け取った役員側で給与所得として扱われ、所得税が課税されます。この給与所得を計算する際に、給与の収入金額から「給与所得控除」といわれる概算経費的な控除の仕組みがあります。実際には経費を使っていなくても、機械的に控除してよいものなので納税者からみれば有利です。
この、給与所得控除の計算については、図表1をご覧ください。
【図表1 給与所得控除額】| 給与等の金額 | 給与所得控除額 | |
| 1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円未満の場合には650,000円 |
|
| 1,800,000円超 | 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
| 3,600,000円超 | 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
| 6,600,000円超 | 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
| 10,000,000円超 | 収入金額×5%+1,700,000円 | |
【給与所得控除額の計算例】
□ 給料が3,000,000円の場合 ==> 1,080,000円=3,000,000円×30%+180,000円
□ 給料が7,000,000円の場合 ==> 1,900,000円=7,000,000円×10%+1,200,000円
会社が役員に役員報酬を支払った場合、これだけの見せかけ経費を控除できるという理屈になり、パフォーマンスとしては小さくありません。
給与所得控除による節税には制限も…
平成18年度の税制改正までは、この給与所得控除を利用した節税ロジックは野放し状態でした。現在では「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」という規定があり、一定の制限が設けられています。
この制度を解説するためには別の記事を立てる必要があるのでここでは割愛しますが、一定の要件に該当したオーナー会社は、法人税の申告書上で給与所得控除相当額を加算しなければならなくなっており、会社に課税される法人税や住民税・事業税の増加につながります。
しかし、この規定はそれなりに利益をあげている会社でしか制限に引っ掛かることはありませんので、開業スタイルを判断する要素としては、あまり神経質になる部分ではないと考えています。
保険料の取り扱いの差も小さくない
個人と法人の税務上の扱いの差を一つ一つあげていてはきりがありません。そもそも、個人には「所得税」が適用され、法人には「法人税」が適用されていて、両者は全く別の法律だからです。
その中で、よく話題に上がる保険について取り上げてみましょう。
会社が役員・従業員を被保険者として支払った掛捨ての生命保険料は、福利厚生費として経費扱いとなります。保険には様々な商品があり、税法上も細かく規定されているので、その取り扱いには注意が必要ですが、一般的な掛捨て保険料は全額が経費扱いです。
ただし、会社が役員についてだけ保険料を負担しているような場合には、役員の給与として課税される扱いもあるので、ここでは役員・従業員に対し普遍加入している保険契約を前提とします。
もし、個人加入の場合、いくら生命保険料を支払っても一般の生命保険で5万円、個人年金型保険で5万円の合計10万円しか控除はありません。
一方、会社では保険の種類によって異なりますが、前述のように全額をそのまま経費とできるものがあり、これを毎年続けることで大きな節税効果を得ることができます。
家族に対する給料でも会社のほうが有利
小さな規模で経営をする場合、家族を従業員として給料を支払うケースも少なくありません。この家族従業員に対する給与ですが、個人と法人では次のような取り扱いの差があります。
個人事業者については、青色申告者の場合、専従者給与として届け出た金額の範囲内で支給した額を経費に計上することができます。白色申告者の場合、一定の金額を事業専従者控除として控除することができます。しかし、これらの計上を行った場合には配偶者控除や扶養控除はできないことになっています。
一方、法人の場合には、家族従業員であっても、不相当に高額でなければ一般の従業員と同じように支給額の全額を経費に計上することができます。また、その支給した年間給与総額が103万円以下の場合には、配偶者控除や扶養控除も可能です。
このように、家族従業員の扱いについても法人のほうが有利であることがわかります。
税率構造が決定的に違う
ここまでの解説は、課税所得が計算されるまでのレベルでした。個人と法人では、このあとの税額の計算方法がまったく違います。
個人の所得税の税率は、図表2のとおりです。
【図表2 所得税の税率表】| 課税所得金額 | 税率 | |
| 1,950,000円以下 | 5% | |
| 1,950,000円超 | 3,300,000円以下 | 10% |
| 3,300,000円超 | 6,950,000円以下 | 20% |
| 6,950,000円超 | 9,000,000円以下 | 23% |
| 9,000,000円超 | 18,000,000円以下 | 33% |
| 18,000,000円超 | 40% | |
この他、個人住民税も考慮すると、課税所得が1,800万円を超えた場合、表面税率は併せて50%にもなります。
一方、法人に課税される法人税の税率は、図表3のとおりです。
【図表3 法人税の税率表】| 課税所得金額 | 税率 | |
| 資本金1億円以下 | 8,000,000円以下の部分 | 18% |
| 8,000,000円超の部分 | 30% | |
| 資本金1億円超 | 30% | |
この他、法人住民税と法人事業税(地方法人特別税を含みます)を併せると、実行税率は約41%になります。
以上のように、課税所得が大きくなれば一般的には会社のほうが有利となります。個人の所得控除まで考慮して、年間所得が1,000万円~1,200万円程度になると法人の方が有利になるケースが多いと思われます。
細かなことに捉われることなく、重要な違いをよく理解したうえで有利な開業スタイルを選択することが重要です。
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